NASDAQ100が21%下落:米中関税戦争と高金利の影響を過去の事例から読み解く

資産運用

2025年春、米中の関税合戦が再び激しさを増しています。
アメリカは中国製品に対して最大145%の関税を課し、中国も125%の報復関税で応戦。WTO提訴、レアアースの輸出規制など、経済と安全保障の対立が複雑に絡み合い、市場に大きな動揺が広がっています。

そして、その影響はすでにNASDAQ100の急落という形で明確に表れています。

  • NASDAQ100は、2025年2月の高値から21%以上下落し、正式に弱気相場入り。
  • Appleは12%、Nvidiaは13.6%、Teslaは13.1%の下落と、主力テック株が軒並み打撃。
  • 市場の恐怖指数(VIX)も、2020年のパンデミック時以来の水準に迫っています。

「また関税か…」という言葉では済まされない事態です。
「この下落は一時的な調整なのか?」「それとも長期的な構造変化の始まりか?」――
そんな疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。

でも、こうした米中対立と市場の動揺は、今回が初めてではありません。
同じような構図が、第一次トランプ政権(2017〜2021年)にも存在していました。

今回はその当時の関税措置と、NASDAQ100にどんな影響を与えたのかを振り返り、今の状況にどう向き合うべきかを考えていきます。


関税戦争の始まり:かつてのアメリカも「関税強化」に走った

2018年、トランプ政権は中国に対して前例のない大規模な関税措置を実施しました。

  • 対象:約3,700億ドル分の中国製品
  • 税率:最大25%
  • 理由:知的財産権の侵害、強制的な技術移転、貿易赤字の是正、「中国製造2025」への警戒

これは、2000年代初頭の2〜5%程度だったWTO基準の関税水準を大きく超えるもので、中国も約1,100億ドル相当の米国製品に報復関税を課しました。


株価への影響は?NASDAQ100の「回復力と教訓」

この関税合戦の中、米国株式市場は大きく揺れました。特に影響を受けたのが、テクノロジー株の多いNASDAQ100です。

NASDAQ100の推移(2017〜2021年1月)

  • 2017年1月:約4,900ポイント
  • 2018年末:関税と利上げの影響で一時約20%の急落
  • 2021年1月:約13,000ポイント超(約2.5倍の上昇)

2018年後半、NASDAQ100は「関税+利上げ+景気減速懸念」の三重苦で、大幅に調整しました。
しかしその後、FRBが利下げに転じ、金利が下がると投資マネーが再びグロース株へ流入。
AppleやAmazonといったビッグテックの好決算も後押しし、NASDAQは力強く回復しました。


今との違い:「金利環境」に注意

現在(2025年)と当時の最大の違いは、金利の水準にあります。

  • 当時(2019年):関税はあったが、FRBは利下げモードへ
  • 現在(2025年):インフレ対策のため、FRBは5%台の高金利を維持

今回は「高関税 × 高金利」という、株価にとってはダブルで逆風の状況です。
とくに将来の成長を期待して買われるグロース株にとって、高金利は割引率の上昇となり、株価の下押し圧力が強まります。


いま投資家ができる3つのこと

このような状況の中で、投資を続けるにはどんな視点が必要でしょうか?

1. 感情に左右されず「仕組みで動く」

暴落時に大切なのは、感情ではなくルール。
積立投資やリバランスなど、事前に決めた仕組みを守ることが、長期的なリターンを守ります。

2. 金利を味方につける投資へ目を向ける

高金利時代には、

  • 債券や短期国債
  • 高配当株・ETF

といったキャッシュフロー型の資産も活用し、値上がりに依存しない安定的なポートフォリオ構築が求められます。

3. アセットクラスと時間の分散を徹底する

  • アセットクラス分散:株式、債券、不動産投資信託(REIT)、コモディティなど、複数の資産クラスに分散投資する。
  • 時間分散(ドルコスト平均法):一度に大量投資するのではなく、定期的に一定額を投じることで、購入価格の平準化を図る。
  • 地域分散:米国、先進国、新興国など、地域ごとにリスクとリターンのバランスを取る。

これにより、特定の市場やタイミングに依存せず、全体のボラティリティを抑えつつ安定的な資産形成が可能になります。


まとめ:過去を知ることは、未来に動じない力になる

第一次トランプ政権下の関税戦争は、市場に大きな揺れをもたらしましたが、NASDAQ100は最終的に大きく成長しました。
関税という不確実性の中でも、金融政策や企業の成長、そして投資家の行動次第で結果は変わることを示しています。

今回は同じような関税リスクに加え、高金利という新たな重しもある環境。
だからこそ、冷静に過去から学び、自分なりの判断軸を持つことが、長期的な資産形成につながります。

不安なときこそ、感情ではなく「知識と仕組み」で備える。
それが今、投資家としてできる最も現実的な選択です。

コメント